一度見ると忘れられない!愉快な世界観、富野節炸裂の作品∀ガンダム

∀(ターンエー)ガンダムですが、富野由悠季氏らしい表現が多いガンダム作品です。

∀ガンダムで見られる表現のほとんどは、近年の富野由悠季氏の作品でも見ることができます。例えば、コミカルなキャラクターが多いところ、もしくは、戦争をテーマにして、戦争の加害者だけでなく、被害者側の視点を設けているところが、富野由悠季氏らしさと言えるでしょう。

富野由悠季氏は、キングゲイナーでもコミカルなキャラクターを生み出し、そして、独特な雰囲気の争いごとを描くことが多いです。∀ガンダムの場合、地球という偉大な星に下り立った少年が、地球人と交流を深めていく作品として描かれています。

∀ガンダムの魅力は、純粋な少年が戦争であり、戦争の裏に潜むものと対峙するところにあります。少年の視点で描かれている作品というと、ファーストガンダムに似た世界観でもあるのですが、∀ガンダムの世界は、古い文明が遺っているだけで、基本的に文明が発展している世界ではありません。

そのため、ガンダムの存在を知ってから、ガンダムという文明を掘り起こすことに執着するようになっていくのです。主人公のローラ・ローラは、このような世界のありように嘆くこともあれば、男性として弱い人たちを守る意志を固めるようになっていきます。

このような人間ドラマこそ、富野由悠季作品の真骨頂と言えるでしょう。そのため、∀ガンダムの中では悲惨な戦闘が繰り返されるというよりも、どちらかというと戦争をやめさせたい主人公側、そして、敵側にも同様の意思を持つものが紛れているという魅力があります。

この魅力であり特徴をわかりやすくしたものこそ、地球側、月側の代表者の入れ替えでしょう。代表者らは背格好が似ているということもあり、また、お互いに気の合うものとして仲良くなっていくのですが、個々の思惑もあり、代表者の入れ替えを行ってしまうのです。

ハラハラドキドキの展開となるのですが、このような普通では起きない、非現実の面白さも∀ガンダムの魅力と言えます。

そして、その他の∀ガンダムの魅力はというと、それは、なぜ栄えた文明が滅んでしまったのか、文明が滅んでしまったはずなのに、ガンダムなどの兵器は遺っているのかという謎です。∀ガンダムには恐ろしい兵器が搭載されており、ナノマシンを搭載している以外の強みがあります。

ただ、こちらは兵器として運用できる代物ではなく、オーパーツのように、人類が触れてはいけない要素を併せ持つ兵器なのです。このような事実は、味方、敵ともに一部の人物しか知りません。

そして、∀ガンダムを兵器として運用したいもの、∀ガンダムを守護者として運用したいものの争いが起きるのです。主人公のローラ・ローラは、健気にも敵との戦いに応じて仲間を守り、またパイロットとして、辛い別れを選択しないといけない場面も出てきます。

∀ガンダムは、これだけでも良くできたストーリーとなっているのですが、月にいる軍人らの存在感も強く、∀ガンダムと相対するガンダムが出てきてからは、戦闘面も楽しめる作品となっています。∀ガンダムは、ファーストガンダムのような雰囲気を併せ持つだけでなく、時に強力な兵器が人類に仇なす、そのような恐ろしさを上手にまとめたガンダム作品として評価できます。